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十年ぶりに村に帰る我輩、山道を歩きながら昔の事を思い出していた。村の馬鹿達は元気でやってるだろうか。お父様は世間体を気にして馬鹿息子は死んだ事にしてるだろうか。お母様には悪い事をした。馬鹿達はともかく両親には合わす顔はない。
村に近づく度、不思議な感情と共に心臓がどくどく鳴る。やがて太鼓の音と人々の賑わう声が聞こえてきた。森が開け、その音が目前に広がった。祭だけあって屋台が連なり、人がたくさんいる以外は、十年前となんら変わりない我輩の村があった。
歩きながら村に帰る事を後悔したりもしたが、故郷は何年経っても愛おしい。しかし、いつまでも懐かしい想いに浸っている場合ではない。早く身の潔白を証明して飯と酒をたらふくご馳走してもらわねば、来た意味がない。それに、のんびりしてると両親に会いかねない。
自分の仕事を忘れて屋台に見とれている馬鹿を急かして、さっそく村長の家へ連れて行ってもらう事にした。その道中、今度は我輩が足を止めて馬鹿に急かされた。人が多い祭で一際人だかりが出来ている所があったからだ。一体何の催し物だろうか。
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