契約書

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「おーい…家政婦〜」 <私のこと?>   「はい。」 「ちょっタオル取って。」 私は目をつぶってタオルを手渡すため腕を伸ばした。   「サンキュ」 ちゅ… <へ?> ビックリして目を開けると…全裸男が…。   「いーーーやーーーぁーーー!!」 「だから!うっせー!!」 「すみません…。」 急いでその場から離れた。 〈キスされた?…私、さっきキスされた?〉 クラクラする。 彼が腰にタオルを巻いただけで出てきた。   「あ…あの…。」 「あ?」 「さっき…キスしましたよね?」 「ああ…それが?」 「それが?って…意味わかんないんですけど?」 「お前が目を閉じて来たから、して欲しいんだと思った。」 「は?バッカじゃないの?」 「あ?お前…雇い主に向かって!その口の利き方はねーだろ!!」 《こりゃ…しっかり躾からだな…。》 「結構です!私、今日で辞めます!あんなセクハラ…サイテー!」 「は?何言ってんの?契約書に書いてあっただろ?」 「へ?」 「お前、ちゃんとサインしてんじゃん。」 彼は契約書を出して、何やらマーカーで線を引き始めた。   「ほら!ココ!」 指でトントンと契約書をたたく。マーカーの部分を読むと…   【乙は甲が性を欲した時には それを無条件で受け入れること また  乙からの契約期間満了以前の解約については  乙は甲へ金五百万園を支払うものとする】   「何…これ?字ちっちゃいし!うっすいし!こんなの詐欺じゃん!!」 「でも、ちゃんと書いてあるだろ?読んでないとしたら…お前が悪い。サインもお前の直筆じゃねーの?」 「そうだけど…クーリングオフは?」 「クーリングオフできるのは8日間だ!」 〈もう過ぎてる…。〉 彼は呆然としている私の背後から、私のシャツのボタンを外してきた。   「だから、契約期間が満了するまでは五百万払えなければ…お前から解約もできないし、お前の体は俺のものってわけ。」 はだけたシャツ、露わになった胸元。彼は後ろから覆い被さり、私の胸に捺印をするように紅い印を付けた。   「今日は性を欲してないから…ココまでにしてやる。今から仕事に出るから、俺がお前を欲するまでに覚悟を決めろ。いいな?」 〈そんな…〉 彼は、さっさとスーツに着替えて出て行ってしまった。残された私はソファにヘタレ込み、何も映っていない真っ暗なテレビ画面に映る自分を見つめた。シャツははだけ丸見えの胸元。そして紅い印。とんでもない契約書にサインをした事を後悔した。
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