契約書

5/22
前へ
/22ページ
次へ
ガチャ 「お邪魔しまーす。」 小さな声で囁いてみる。 <いない?留守?とりあえず会わなければOK…。> 玄関から服が散乱してる。脱ぎ捨てられた服を拾いながらリビングへ。 <え?> 寝室まで続く服。嫌な予感がした。寝室のドアが少し開いていて…微かに聞こえる女の人の声と熱気を帯びた息遣い。 <最低!こんなの聞かせる為に呼んだの?あんな脅しみたいなメールまで書いて…。> 彼の住んでる世界が全く理解できなかった。<一生かかっても良い。違約金を払おう。>そう覚悟を決め、ドアを開けて、ベッドの上で自分に跨る女の人の腰を揺さぶっている彼に向かって拾った服を投げつけた。 「うわ!」 「バッカじゃないの?こんなの私に聞かせて何が楽しいの?何?見られて興奮するタイプ?何でこんな事までしなくちゃいけないの?意味わかんない!」 女の人を自分から降ろし、スウェットのズボンを履いて私の所へ来た。 「ちょっっこっち来い!」 「離して!」 「いいから…座れ!」 彼は私をソファに座られせ、自分も斜め向かいに座った。 「今日来ると思ってなかった…。」 「そんな言い訳みたいな…あんなメールして来たら…。」 「悪かった。」 <あれ?なんか調子が狂う。いつもの強気じゃない?> 「広人?話してる時にごめんなさい。」 「あ…ミナ…今日は悪い。帰って良いよ。」 「うん。広人大丈夫?」 「うん。大丈夫。また連絡するから。」 ミナという名の女の人は帰った。彼は立ち上がって、さっき私が投げつけた服を拾いはじめた。 「あ…あいつ…また…。」 さっき帰ったミナという人に電話をかけてる感じ…。 「俺シャワー浴びるから。これ取りに来たら渡して…。それからタクシー代も渡しといて。」 「自分で渡せば良いじゃん。」 「お前じゃないと意味ないの。」 そう言って、私に彼女のショーツと1万円を渡してバスルームに行ってしまった。 「気まずいじゃんか…バカ。」
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

105人が本棚に入れています
本棚に追加