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「あなたの作品あんなに良かったのに、ここに載ってなかったよ。でも私の中ではほんとに好きだったのだけど……」
彼女がもじもじとこう告げてきてくれたのだ。俺は驚きが隠せぬまま「ありがとう」と告げてその場を立ち去ってしまった。
その後も席が近くなると、今でも俳句を作っているのかと話しかけてくれてよく話していた。入退院を繰り返していた俺は友達も少なかったので会話がとても楽しく、ずっと会話が続いてほしいと思っていたものだ。
でもあの時詠んだ俳句がどうも思い出せない。何だったんだろう。
普段は寝過ごすなんてことはしないのに、こんな時間に駅で一人もの思いにふけるだなんて。
さっさと帰ろうとしたその時、ポスターを眺める一人のアラサーぐらいの女性がいるのをみた。
まさか、あの人は。いや違うか。
でも、不思議とあの時詠んだ俳句がはっきりと思い出されたのだった。
俺はあの時のように女性の方に近づき、肩を叩いたのだった。
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