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宙を舞うチョコレート
片手にはチョコ。もう片方には各家庭のキッチンから持ってきたボウル。
体育館に集められたジャージ姿の全校生徒が臨戦体制になって待機する。
「はじめぇっ」
生徒会長の掛け声を合図に一斉に綺麗にラッピングされたチョコレートの箱が飛び交う。
何これ。普通にカオスじゃんと思ったそこのあなた!
これは、ここ真住料理学校の伝統行事、「チョコトス」。
名前の通り、1月の授業課題で作ったチョコ――――友チョコ、義理チョコ、本命チョコだろうがなんでも自分の熱い思いと一緒にぶつけてしまえ、というここは本当に料理学校なのかと疑うレベルで食べ物を粗末に扱うイカれたバレンタインのイベントである。
今チョコを一心不乱にぶん投げている私自身、こんなのありかって思ってたからね、入学当初は。
でも、ここでチョコを投げなければこの学校の生徒に告白は出来ない。チョコトス以外でチョコを渡すことが許されているのは、さっき号令をかけた生徒会長ぐらいだ。もしそれ以外の生徒が裏でコソコソと「あ、あの…………付き合ってください」なんて甘酸っぱい空気をただよわせてやろうものなら通りかかりの人に余ったチョコをぶん投げられる。
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