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本書の章分けについて
ここで、辰濃さんが文章を論じる際の章の分け方をご紹介しておきます。
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第一の巻では、文章を書くさいの準備段階というか、材料を仕込むときの心構えといったことを書いてみます。
広い円
場(現場)
無(無心・白紙)
欲(意欲)
感覚
の五つの主題を扱います。いちばん上の文字をつないで〈広場無欲感〉の巻とします。
第二の巻は、文章を書くうえで、基本的に大切なことと考えていることです。
平明
均衡
遊び
具体性
品格
の五つの主題を扱います。これもいちばん上の文字をつなぎあわせて〈平均遊具品〉の巻としておきましょう。
第三の巻は、実際に文章を書くときの表現上の心構えです。
整えること
正確
新鮮
選ぶこと
流れ
という五つの主題を扱います。上の文字をつなぎあわせて〈整正新選流〉の巻とします。
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まだ何のことかさっぱり分かりませんね。でも、何かわくわくした気持ちになります。
個人的には、「広い円」「遊び」「新鮮」に心惹かれます。
それでは、さっそく内容に入っていきましょう。
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一、〈広場無欲感〉の巻――素材の発見
【広い円――書くための準備は】
辰濃さんのこの著作は、含蓄のある言葉がいっぱいで、できれば本書そのものを読むことをおすすめします。
ここでは、あくまで私の個人的な勉強ノートとして、私が気になったところを引用し、感想や所感を述べていきます。
「広い円」の意味とは、次のように述べられています。
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土の上に直径一メートルの円を描き、その円内で円錐状の穴を掘ります。次に直径五メートルの円を描いて穴を掘ります。どちらがより深く穴を掘ることができるか。いうまでもなく、円が大きければ大きいほど、穴も深くなります。
ものを書くときは準備が大切です。小さな円を描いたのでは、それだけのもので終わってしまいます。はじめから思い切って広い円を描いて準備をすれば、内容の深いものが生まれます。
と、言葉でいうのは簡単ですが、土を掘れば石ころもある。木の根っこもある。そういうものと根気よく格闘しなければならない。人はともすれば易きにつきがちです。つい小さな穴ですまそうとする。
しかし、小さな穴でごまかした文章は、結局はそれだけのものです。……
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「小さな穴でごまかした文章は、結局はそれだけのものです」との最後の一文が心に刺さります。
文章はやはり、テクニックだけではいかない。ごまかせない部分があるのだと自分を戒める気持ちになります。
ふだんから、いろいろなものに目を向け、観察し、自分の頭で誠実に考えること――小説だけに限りませんが、小説においてそれは顕著に表れることのようにも思えます。
※なお、このエッセイはnoteでも同時連載しております。
noteの方がレイアウト的に読みやすいので、よろしければそちらからどうぞ。コメント欄にリンクを貼りつけております。
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