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「ねぇ、わたし 二十歳になったよ
君が今迄わたしを支えてくれたお陰で大人の仲間入りが出来たよ
感謝してる
でも 君は去ろうとしている
引き止めるのを出来ない事は十分 分かっているけど...」
当時わたしが住む家は大規模な新興住宅地で場所によってはまだまだ建設中の道路や施設が残っていたけど住んでいた辺りの区画は整備が終わっていて少しずつ住人が増えていた。
そんな中 隣に引っ越して来たヒトシとは小学校入学の時から一緒に登校したり遊んだりして家族ぐるみで仲良くしていた。
彼を失ってしまった近くの空き地を公園にする工事が始まったのはわたしが小4の頃だった。
そこは元々畑に囲まれた小さな小川が流れていて夏になると家族でよく遊んだ場所だった。
小3の夏休み
あの日の午後
わたし達はいつものように学校のプールで遊び 帰りはその小川に行って気が遠くなるほどお腹が空くまではしゃいだ。
光を含んだ水の粒はわたし達を包みキラキラと残像を残しながら眩しい夏の日を記憶に刻んだ。
でもわたしがハッキリと覚えているのはその光景が最後でヒトシがその小川の川底で髪の毛とシャツをゆらゆらとなびかせていた事と、泣きながら家へと走ったまだ舗装されていなかった凸凹の道、そして母親が驚いて隣家に駆け込んで行った、そんな部分的な記憶しか残っていない。
その小川は深い所で当時のわたし達の膝下位の水位でなぜ彼が溺れてしまったのか未だに原因が分からないままになっている。
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