蓮華薬師堂薬局の処方箋

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 こうしてバタバタとしているうちにあっという間に午前中は終わり、昼休憩を少し押した時間でようやく患者が途切れた。再開する三時まで、少しの間ゆっくりすることが出来る。まずは全員で奥の休憩室に移動し、そこでお弁当タイムだ。 「はあ。今日は多かったですね」  まだまだ雑用係の桂花だが、今日はこの薬局に就職して以来の多さだった。四月一日から働いて今日で二週間になるが、これほどドタバタしたことはない。朝慌てて詰め込んだ弁当を開けると、思わず溜め息を吐いてしまう。 「そうですね。花粉症の方も多かったですけど、季節の変わり目とあって風邪の症状を示している人もいましたね。季節が変わる時期は気の乱れが生じやすいですから、これは当然というべきですけど」  法明が自分で作ったという弁当を広げながら、困ったものですねと呟くと 「そうですね。四月に入っても天候が安定しないのと、たまにある寒の戻りのせいでしょうか。春というのは精神的にも不調をきたしやすいですしね。頭痛を訴える人も多かったように思います」
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