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しかし、その謎の人物は血色のいい顔をした男性で、ぞろぞろと出てきた薬剤師たちに、にやっとニヒルな笑みを浮かべて見せた。髪は無造作ヘアで今時の若者らしい顔立ちで清潔感があり、ぴしっとスーツを着ていて、爽やかな見た目に合わない笑みが印象的だ。
年齢は二十代後半くらいだろうか。桂花と同い年か弓弦たちと同い年というところのように見える。そして、その姿だけ見るとMR、製薬会社の医療情報担当者かと思ってしまう。
「やっぱりだよ」
弓弦が嫌そうに顔を顰めた。ということは、やはり先ほどの話題の人がこの人で間違いないらしい。そして、やはり弓弦も嫌いなようだ。
「えっと、この人が疫病神ですか」
しかし、製薬会社からやって来たかのような人が厄介者扱いなのはどうしてだろう。そんなに嫌われるような雰囲気は持っていないし、まだまだ漢方薬は素人の桂花が見ても虚弱体質には見えなかった。
「おや、そちらのお嬢さんは見慣れない顔ですね。これは珍しい。新人さんですか。それも普通の人間のようですね。薬師寺、新しく、それも普通の人間を雇うなんてどういう風の吹き回しですか。また怒られても知りませんよ」
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