蓮華薬師堂薬局の処方箋

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 いや、そもそも不純な動機であの薬局に就職するから大変なことになっているのだが、でも、漢方に悩まされるのは仕方がないとして、どうして陰陽師が関わってくるんだか。謎である。それも法明にまで嫌われているだなんて、かなり不思議だ。 「いや、よく考えるとあの人も謎だったかなあ」  そう言えばと、桂花は寝返りを打つ。  薬剤師を目指したきっかけになった人。その人もよく考えたら不思議だったかもしれない。  どうしてあんな場所に、白衣を着たままいたのだろう。仕事中に白衣を着ているのは当然だとしても、外で白衣を着たままというのはおかしい。自分が薬剤師になってみると、この点が謎だった。しかもあの当時、あの近くには薬局なんてなかったのに。 「ううん、仕事を抜け出して散歩中だったのかしら」  その人に出会ったのは、このお寺の近くなのだが、小学生だった桂花にはとても遠くに感じた竹林の中だった。この先に何があるんだろうと、ちょっとした冒険心を起こしてずんずんと竹林を進んでしまい、いつしか迷子になってしまった時のことだ。 「大丈夫かい」
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