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「そうだ。これをあげよう」
じっと見つめていたら、その人は茶色の飴玉をくれた。きっとお腹が空いていると勘違いしたのだろう。
実際にお腹も空いていたし、喉もカラカラだったから、桂花は素直に受け取ると、その飴玉を口の中に放り込んだ。
それは甘い味わいなのに何だか不思議な味がして、食べたことのない飴だった。しかもほんのり柔らかく、すぐに口の中で溶けてしまう。
「これはなんていう飴ちゃんなの」
「ああ、それはね、僕が作った飴なんだよ。だから名前はないんだ」
「そうなの。じゃあ、お兄さんはお菓子屋さんの人なの」
「ううん。お菓子屋さんじゃないんだ。そうだなあ、何て言えばいいかなあ、そうそう、薬剤師なんだよ。知ってるかい、薬剤師」
「薬局にいる人でしょ。お薬をくれる人だよね」
「そうそう。偉いねえ」
「そのくらい知ってるよ。桂花はもう五年生だよ」
迷子になったことを棚に上げ、自分はもう大人だとばかりに桂花は主張した。すると、その人はくすくすと笑って謝ってくれた。
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