482人が本棚に入れています
本棚に追加
咄嗟に答えが出て来ず、桂花は唇を噛む。悔しい。だが、勉強不足なのは痛感している。ここに入ってずっと知識が足りないと悩まされている。今もぱっと出てこないの自分が腹立たしかった。
「はいはい。代わりに僕が答えましょう。ショウブは冬に掘り出した根の部分が漢方薬に使われます。生薬名は菖蒲根。木綿の袋に入れてお風呂の湯に入れて使用します。肩こり・筋肉疲労・神経痛などに効果があると言われていますね」
喧嘩がエスカレートしないうちに、適度なところで法明が止めに入る。ついでに漢方薬の講義までしてくれるのだ。
こうして朝が騒がしいのも、桂花が入ってからお馴染みの光景となっていた。それが終わると三人はごそごそと身なりを整え、白衣を身に着けて集まるとようやく薬局らしい雰囲気に戻る。
「そろそろ始業ですよ」
法明が時計をチェックして、のんびりとオープンを告げる。表のシャッターを開けるのは彼の役目だ。すると早速病院から問い合わせがあり、忙しい午前の営業がスタートする。それに合わせて在庫のチェックや薬歴簿の管理、さらには朝早くからやって来る患者さんの対応と、すぐに慌ただしくなった。
最初のコメントを投稿しよう!