訳ありの遺品整理

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「前から独立をしようと考えていて、すぐに結婚しようって言えないんだ。 ただ、一年位内には目処が立つだろうと思う。 それに要らぬ苦労をするかもしれない。 …待っていてくれないか。」 彼がそう言うと開け放った窓から優しい風が吹いていった。 降りつもっていた埃が、私達を包む様にフワッと舞った。 今なら少しわかる、祖母の心が。 苦労をするとわかっていても、一緒に居たいと思った。 祖父が建てたこの家には祖父との思い出がたくさんあるから、離れたくなかった。 おばあちゃん、ごめんなさい。 そして、ありがとう。 やっとわかった気がする。 「待つわ。」 「ありがとう。本当にごめんな。 これで会社を辞める決心がついた。 これからが大変だな。」 「大丈夫。私も手伝うわ。」 それから彼は、独立してから1年後には会社を軌道に乗せた。 私達は祖父母の家をリフォームして、ここから2人の生活が始める事にした。 祖父母の様に仲良く時を重ねていきたい。 FIN
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