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星空ジャングルジム
北風がとても身にしみて冷たい
行き交う人はみな一様に下ばかり向いて足早に通り過ぎてゆく
とうに日が暮れた街には能天気なジングルベルがあちらこちらから流れている
ふと空を見上げる
澄んだ空気に満点の星空
そうだこの先にまだあるだろうか
昔ながらの古いジャングルジム
人波を追い越し小走りにその公園へ
あった
まだあったのか
古いジャングルジムが
その古い銀色のジャングルジムには月明かりや街灯が反射して所々光を帯びていた
手を触れてみる
冷たい鉄の感触
何十年ぶりであろうか
ひとつずつ丁寧に登る
あの頃はてっぺんまで登ると、とても高く思えた
今、数十年ぶりに登ったのだがやはりとても高い
星空に手が届きそうだ
あの頃ぼくは星に手が届くと信じていた
母親は夜も働いていたのでぼくはいつもひとりぼっちだった
クリスマスの夜もひとりぼっち
学校の友達はみな家族とごちそうを食べサンタからプレゼントをもらうらしい
でもぼくのところへはサンタはやって来ないのだ
だからぼくはこうしてジャングルジムのてっぺんでサンタクロースが来るのをずっと待っていたんだ
ぼくとお母さんのアパートの部屋は小さいからきっとサンタは見落としてしまうのだ
だからここでサンタを待っているんだ
サンタさん今からお願いしても平気かな
ぼくは何もほしいものはないんだ
ごちそうもほしくない
お母さんに新しい手袋とマフラーを届けてください
夜更けまでそう願いジャングルジムの上で待っていたんだ
白い息が夜空へ吸い込まれてゆく
サンタさんどうかお願いです
どうかお母さんへ
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