石灯籠

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石灯籠

純真無垢。よく言えばそうだ。実際は、女はただの白痴であったのだ。 今日も仕事の帰り道、また石灯籠の陰に隠れ、隠れといっても半身丸見えで頭隠して尻隠さずにも似た様子でじっと私を見ている女。また、と言うのもいつからであっただろうか、もう半月にもなるだろうか。毎日こうして私を見ている女がいた。陽射しの強い夕暮れどきは白いつばの広い帽子を浅くかぶり、雨の日には小さな子供の傘のようなものをさして見ているのだ。石灯籠に半分隠れたその表情は目を大きく見開き口をきゅっと閉じ、きっとこちらから自分の姿は見えていないとでも思い息を殺して見ているのであろう。歳の頃なら十七、八か。いつも同じ白い、肩の露出したワンピースを着ていた。よく見れば美しい顔立ちで私は最近になりその女に興味を抱いたのだ。もし今日も石灯籠におったならば声をかけようと朝から決めていた。毎日ああしておるのだからきっとこちらに興味があるに違いないと思ったのだ。じつはこの朝もうひとつ抱いた邪な気持ちは隠し私は声をかけてみた。 「こんにちは」 女は微動だにせず石灯籠に半身を隠したまま黙って私の目を見ている。怖がらせてはいけないと思い普段は作らぬような笑顔をしてみせた。 「毎日そこから何が見えるかね」 石灯籠に半分隠れた女が急に口元をおさえ笑いだした。いつもの強ばった表情より美しいその笑顔はまるで子供のようであった。何かを女は笑いながら言ったようだが聞き取ることはできなかった。 「僕もそこから見てみようかな」 そう言って女のすぐ横に立ってみた。ほとんど人の通りもない土埃の舞う道を豆腐屋の自転車がラッパの音を残してゆっくりと過ぎて行った。 「君、この辺りに住んでいるのかね」 女は一度私を見てから沈みゆく夕陽の方を指さした。 「お婆さんといる」 女の指さした方は河岸の数軒列なる長家の方であった。豆腐屋の次は烏が数羽その長家の方へと飛んで行った。もう日も暮れる。まばらにあった人通りも途絶えた。 「君、僕に何か用事があるのかね」 自分でもわかる厭らしい笑顔で尋ねてみた。 女は虚ろに茜色の空に目をやり帽子のつばを何度も触っては考え込むような顔をし時折にやにやと思い出し笑いでもするように笑っていた。私は石灯籠の後ろの方を指し 「少し座って話さないか」 そう言うと、女は左手を私の目の前に突き出した。私はすぐに合点がゆきその手をとり石灯籠の陰へと導いた。女は全く素直に連いてきた。石灯籠の陰に腰をおろしぴったり肩を並べ腰をおろした。その頃にはほとんど日が暮れ薄暗い空に三日月がのぼりはじめていた。 「まだ帰らなくても平気か」 私が尋ねると女は私の目も見ずにこくりと頷いた。この女の存在を認知してからというものいたずらをしてやりたい妄想にかられ毎晩自慰に至っていた。そっと肩に手を回してみたがまるきり嫌がりもせず余計に体を押しつけてきた。こういう女でも、そういうことだけは立派に一人前なのかと少し軽蔑しながらも、私は人様が聞いたらもっと軽蔑されるような行動を妄想からついに現実へと移した。ワンピースから伸びた白く美しい脚には赤い鼻緒の下駄を履いていた。私はワンピースの裾を捲りあげ、その白い脚を全て露出させゆっくり手で撫でた。女はため息をつくようにまたぐいぐいとこちらに体を押しつけてきた。 「こういうのは嫌かね」 女は黙ってされるがまま返事もせず、その顔をのぞきこむと目は虚ろに口元が半開きになり吐息が漏れた。その白い太ももをまさぐり滑らかな肌の感触に私は興奮しズボンのチャックをおろし硬くなった陰茎をだし、それを女の手に握らせた。女はどうしていいのか知らぬ様子でただそれを握っていた。私はその女の手の上から自分の手を覆い上下に陰茎をこすり動かした。すると今までの虚ろであった女の目が少し正気を取り戻し、女は私の手を、自分の太ももへと戻した。私はまた女の太ももを撫でまわしてやると半開きの口元から涎が垂れはじめていた。私は片方の手で陰茎をしごきながら女の足を手にとりそれを口元へ運び足指を舌で愛撫した。女の息は先程よりも激しさを増しとうとう自分で下着の上から股を指でなぞりだした。私はこの女の存在を認知してからいつかこうして女の足指をしゃぶることばかり実は考えていたのだ。しかしまともな女ならば拒絶されるであろうと思ったのだがその心配は無用の人間であった。女の足指を一本、いつぽん唾液まみれにし少し汚れ土の味のする足裏へと舌を這わせたところで私は果てた。飛び散った白いものは女のもう片方の足にもかかり汚し穢した。女はそれが済むとまるで何もなかったように立ち上がり私へと手をふり歩いて行ってしまった。 「また明日」 私がそう言うと女は大きく頷き、また手をふった。 「いいかねこれは内緒のことだよ」 女はまた大きく頷いた。 私が女を犯すまでそれからさほどの時間はかからず、女のほうから体を求めてきたのだ
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