勿忘草

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勿忘草

誰が置いたのだろうこの勿忘草の花束をこの窓辺のテーブルへ また今日もひとり来てしまった 日曜の昼下がり あの喫茶店へ 毎週日曜の昼下がりに女がひとりで来るなんて それも決まって私が頼むのは コーヒーふたつとチーズケーキふたつ ひとりなのに そう 今はひとり 昔は彼とふたり 窓辺のテーブル 春には桜 夏の向日葵 秋には紅葉 冬の綿雪 いつもこの店でコーヒーを飲み 楽しい時間を過ごした そう 彼を突然事故で失うまでは 無口なマスターと物静かな奥様 きっと おふたりなのですね
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