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プロローグ
白いシャツを着た少女が、公園のベンチに座っている。何度も読み返しているのか、手に持っている本は表紙が色褪せ、いくつも折り目がついてしまっている。
少し離れた所から、少年が歩いてきた。着ている黒いパーカーのフードを被っているせいで、表情がうまく読み取れない。
徐々に厚くなっていく雲。風はそこまで強くはないが、空気は確実に冷たくなってきている。
夜の闇がすぐそこまで迫っていた。
少女は不意に本を閉じると、スッと立ち上がり、少年に近づいた。
そして少年を真っ直ぐ見つめると、何の脈絡もなく告げた。
「ねぇ、ゲームをしない?」
「……え?」
冷たい風が二人の間を通り抜けていく。
少女は少年の胸を指でトンと突き、彼の耳元で囁いた。
――「最後まで秘密を隠し通せれば、貴方の勝ち」
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