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家出
「・・・よし、みんな、準備はできたか?」
アシュアは荷造りを完了させて、2人に尋ねた。
ありったけの食料、飲料と、服は最小限だけにして、あとはロープや懐中電灯など、足しになりそうな小道具たちを古びたリュックサックに、それぞれ詰め込んだ。
「ねぇ、ほんとに怒られない?すぐ見つかるんじゃ・・・。」
弱気なフィリーをよそに、
「ほら、さっさと行くわよ!」
マリゲルタに促され、フィリーは重い足取りで前に進んだ。
ヨーゼフ孤児院の周りには、塀などはない。
建物の周りに広々と草原が広がっているだけだ。
その分、視界は広い。
見張りの人に気付かれれば、一発アウトだろう。
「みんな、ほふく前進で行くぞ!」
「ええっ!体力ないってば・・・。」
フィリーの弱音をよそに、2人は地面に這いつくばって、草原を進んでいく。
あたりは、夕日が落ちて、薄暗くなっており、視界が悪くなっている。
アシュアたちにとっては、孤児院を抜け出す、絶好のチャンスだ。
アシュアとマリゲルタはフィリーを励ましつつ、引っ張りつつ、町へと足を運んだーー。
草原を抜け出し、町に着く頃には、すっかりあたりは真っ暗になっていた。
街灯が、どこか寂しげにゆらゆら揺れている。
「うわーん、さっきので服が土でどろどろだよ!」
フィリーは半ばべそをかいている。
「そんなことで泣かないのよ!これから宇宙人を探し出しつつ、ヨーゼフ孤児院の人に見つからないようにしなきゃいけないのよ。常に警戒のアンテナを張ってないと・・・。」
マリゲルタは、あたりを警戒しながら言う。
町へ出ても、あの時ほど人通りというものはなかった。
みんな、あの不可解な誘拐事件に怯えて、極力外に出ないようにしているのだろう。
「まず、被害者の家族たちに話を聞いてみよう。なにか掴めるかもしれない。」
アシュアは、事前に調べておいた、被害者の家の住所を取り出し、歩みを進めた。
「な、なんだか人が全然い、ないって、へ、変なかんじ、だ、よね?」
フィリーの言葉にアシュアはクッと笑った。
「おいおい、震えすぎだろフィリー!お化け屋敷に来てるわけじゃあるまいし、堂々と行こうぜ!」
「・・・お化け屋敷の方が、まだマシだ・・・。」
フィリーが言った瞬間のことだった。
「うわぁーーーーー!!!!」
すぐ側の町角から、男性の凄まじまい悲鳴が聞こえた。
3人は顔を合わせ、声のする方へ駆け出したーー。
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