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思わぬ展開
薄暗い町角で、男性の上にもうひとりの男性が覆い被さるように乗っかっていた。
男性がもがくも、力づくで抑えられているためピクリとも身動きができなかった。
「そこまでだ!その手を離せ!」
アシュアは、勢い任せに言った。
正直、男性が振り返るのが怖かった。
また、あの時みたいに、あの日見た宇宙人の瞳と重なることがーーー。
アシュアは思わず固唾をのんだ。
ーーー・・・・・・くるり。
振り返った男性の顔に・・・
ーーー・・・・・・良かった。
アシュアは、安堵のため息をつきそうな程だった。
今回は、何も感じなかった。
・・・いや、安堵してる場合じゃない!
アシュアは、男性の顔に思い切りパンチをくらわした。
ーーー・・・・・・バシン!!
鈍い音が、あたりに響く。
「・・・いてっ!!」
男性が頬をおさえ、アシュアが拳をおさえたとき、一筋の矢が、アシュアの顔を掠めた。
「ーーー・・・・・・??」
アシュアが状況を飲み込めずにいると、
「ぎゃあああ!!!!」
さっきまで頬をおさえていた男性が、今度は耳をつんざくような悲鳴をあげた。
「ーーー・・・・・・??」
よく見ると、男性のお腹に、先程アシュアの顔を掠めた矢がしっかり刺さっているではないか。
「ちょ、ちょっと、大丈夫ですかっ!」
アシュアは、思わず叫んだ。
「大丈夫、などとは、聞く必要も無い相手だ。」
初めて聞く、冷たく無愛想な声に、アシュアは驚いた。
今までアシュアをハラハラしながら見守っていた、フィリー、マリゲルタも声の主を見た。
黒のマントとブーツ、スラっとした体型に似合わない大きな弓矢と青白く光る剣。
黒のマントには何やら文字が書いてあるようだったが、アシュアにはそこまで見えなかった。
謎の人物の登場により気を取られていたアシュアだったが、ハッと思い出して、男性の方に目を向けると・・・そこには、倒れている男性と、大きな瞳で青白い皮膚の・・・
ーーー宇宙人、が、いた・・・・・・。
どうやら、先ほどの矢によって、男性と宇宙人が分離したようだった。
男性の体から、煙のように、宇宙人が出てきた。
「ーーー・・・・・・っ!!」
アシュアは驚きのあまり、すぐに体が動かなかった。
「おい、小僧、後ろに下がってろ。邪魔だけはするなよ。」
先程の謎の人物は、アシュアに一言そういうと、青白い剣をシュッと取り出して、宇宙人に向かって駆け出した。
そこからは、あっという間、だった。
宇宙人の速度に対応できる人間などいないと思っていたアシュアだったが、この謎の人物は、宇宙人の速度についていけていたのだ。
アシュアとフィリーとマリゲルタは、宇宙人と謎の人物の高速な動きの戦いに、目をぐるぐる動かしていた。
だが、決着の時は早かった。
謎の人物の青白い剣が、宇宙人の皮膚を貫いた瞬間、
「シャーーーー」
なんともいえない、耳に心地よくない声とともに、宇宙人は、
ジュワーーーー
溶けて消えてしまった。
跡形もなく、塵のように・・・・・・ーーー。
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