生きる目標

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生きる目標

   フィリーとマリゲルタと出会ってから、オレには生きる目標ができた。  なにせ、今までは生きることに絶望しか感じていなかったからだ。  家族のいない世界なんて、何も楽しいことなんてないと思っていた。  でも、フィリーとマリゲルタはオレの話を信じてくれた。    ひとりでは、なし得ないことでも、3人ならできるかもしれない・・・。  3人で力を合わせれば。  オレの父さんと母さんを殺した宇宙人に敵討ちし、弟をヤツから取り返す。  これがオレの生きる目標だ。生きている意味だ。  ヨーゼフ孤児院で日々を送るうち、オレはそう考えるようになった。  ヨーゼフ孤児院に入ってから、もうすぐ3年が経とうとしていた。 「ね!可愛いでしょ、うさぎの赤ちゃん。産まれたてほやほやだよー。」  フィリーは目を細めて、うさぎの赤ちゃんを抱き上げた。 「・・・そう、だな。」  ーーあんまり興味ないけど。  あからさまに興味がないという態度をとると、フィリーが落ち込むのは目に見えているので、とりあえずアシュアは言葉を返す。 「フィリー、宿題終わったの?こんなとこでうさぎ相手にしてる場合じゃないでしょ。」  冷たい声が聞こえたと思えば、やっぱり・・・ 「あ!マリゲルタ!宿題は終わってないけど・・・見てようさぎの赤ちゃ・・・いたっ!」  言い終わらないうちに、フィリーはマリゲルタに耳を掴まれて呆気なく部屋に連れ戻された。 「あんまりだよマリゲルタ!せっかくうさぎを見て癒されてたのに・・・。」 「明日宿題提出なのに、一個も終わってないなんて、どういう神経してるのよ。早く片付けちゃいなさい。」  マリゲルタは冷たく言い放って、アシュアの方に体を向けた。 「で、最近あんまり聞いてなかったけど、宇宙人に関してはどれくらい調べれたの?」 「ああ、そのことなんだけど・・・やっぱりここの図書館には限りがある。情報的には薄すぎる。もっと詳しい資料とか有ればいいんだけどな。」  アシュアは、ため息をつきながら言った。  ー仇を討つには、まずは敵を知ることからー  オレは、宇宙人についての情報を、最近、ヨーゼフ孤児院の図書館に入り浸って調べていた。  なにか、なんでもいいから、事件に繋がるような、手掛かりになるような情報はないか。  だけど、ここの図書館の資料や本は大体古いものばかりで、何より、宇宙人に関する資料なんて、そもそも置いていなかった。      
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