アバ

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アバ

   オレの弟、アバは優しくて、おっちょこちょいな一面のある、弟らしい、弟だった。 「兄ちゃん、ヒーローごっこしようよ!」 「アバはほんと、ヒーローが好きだな。」 「うん!」  アバの笑顔は眩しいくらい、だった。  でも、そんなアバが急に怯え出すことが一度だけあった。  母さんのお使いで、町を歩いている時だった。  何かの気配を感じたのか、急に、アバが青ざめた顔をして、オレに言った。 「兄ちゃん、あの人、なんか変だよ。あの人の周りが青白いオーラで包まれてる・・・。」  アバは、少し前から歩いてくる男性を指差して、オレにコソッと言った。  オレは、アバが指差した男性を見たけど、なんらオレらと変わりない普通の男性だった。 「アバ、全然普通の男性じゃないか。失礼だぞお前。」 「・・・いや、違うんだ!っ、とにかく!」  アバはオレを引っ張って、ひとつ違う路地まで連れてこられた。 「なんなんだ、いい加減にしろよアバ!」  オレはアバのことが理解できなくて、アバを叱った。 「・・・っ、ごめんなさい。」  アバは目に涙を浮かべていた。  オレはその時、アバを理解しようとしなかった。  なぜ、あの時、もっと詳しく話を聞いてやらなかったのか、聞いてやれなかったのか・・・今残っているのは、後悔だけだ。 「それは、霊感とかいうやつじゃないの?」  マリゲルタはオレの話を真剣に聞いて、言った。 「いいや、オレとアバが肝試しをした時も、お墓参りに行った時も、アバは何の反応も示してなかったし、怯えてもなかった。そんなんじゃ無いとは思うんだけど・・・。」 「でも、あなたには見えない何かがアバには見えていたってことよね?」 「それは、確かにそうだ。」 「その能力が、宇宙人にとって必要とされていたのかしら・・・。」 「どうだろう?まだまだ調べる必要があるな。ひとまずは、町に出かけてからだ。」  アシュアは、少しスッキリした顔をして、再び布団の中に潜った。  ーー満月の月明かりが、3人の寝顔を青白く照らしていた。  
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