いつか夢見たその日に

1/1
前へ
/1ページ
次へ
今日、僕のじいちゃんが死んだ 「本当によく頑張ったね」 「母さんが先に死んでから、一人で何でもやって来たんだから偉い人だよ」 棺の中で、大好きだったカサブランカに囲まれて 微笑みを浮かべて眠るじいちゃん 「一人で二十年だもんな、凄い人だよ」 「本当に。いつだって我慢強すぎる位で」 父さんも母さんも叔父さんも叔母さんも 皆、口々にじいちゃんとの別れを惜しんでいる 凄い人だ 偉い人だ 惜しい人を亡くした 皆、皆、じいちゃんを超人みたいに言うけれど 僕だけは知っている 真夜中、皆が寝静まった頃 一人でそっと部屋を抜け出して 縁側でばあちゃんの写真を見つめていた あの後ろ姿を 丸まった背中を 小さく震えていた腕を じいちゃんは、ばあちゃんが大好きだったんだ 皆の前では、ただただ強がっていただけなんだよ だからこそ 本当のじいちゃんを知っている僕だからこそ 敢えて、この言葉で送り出そう 『おめでとう、じいちゃん 本当に、良かったね やっと大好きなばあちゃんに逢えるね』 じいちゃん、ばあちゃん、天国で仲良くね
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加