OneクイックLover

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彼とは先週末、郊外の駅で会った。 彼を選んだ理由は、顔が好みだったのと萌え(推し)処が馨と同じ、日本酒と書いてあったからた。 会って互いの推し酒について語るに終始しても良い。もし話が弾まなかったら、その駅から乗り継いで30分位の所にある、酒蔵に誘おうと考えてた。 丁度その週末、人気の蔵フェスがそこで開催予定だった。回数券を購入し、気になる酒の試飲やツマミにあてる。地場の食材を使った本格的調理のツマミはSNS上、毎回好評で以前から気になっていた。 蔵フェスだけが目当てなら、由佳や女友達に声をかけるのもありだった。それか同じマッチングアプリで日本酒好きの女性をクイックするのも。 異性を選択したのには訳がある。 大学時代付き合ってた彼氏とは、社会人になってから別れた。 最初は二人共、仕事を覚えるのに一杯一杯。 そのうち仕事が楽しくなり、恋人同士の時間を疎かにした。在り来たりな流れだ。 地方出身の馨は一人暮らし。忙しない時間を少しでも共有出来る様、同棲を考えなかったわけじゃない…しかし部屋には、上京と同時に増え続けた衣類や雑貨達があった。 デートの時、彼に可愛いと誉められた洋服。 中高の部活動着と同じスポーツブランドなのに、小洒落たデザインのウェアは、二人が出逢ったアウトドアサークルでよく着ていた。 それから180℃テイストが違う、就活から今に至る服やアクセサリー。 彼と一緒に住むには、それらを整理処分し空間を確保するか、共有する部屋を新しく探すか。 どちらに向けての労力も厭わしく思った時点で、終わっていたのだ。
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