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馨を気遣う由佳に、
「食べ過ぎちゃったかな」
と戯けて、早足でエレベーターホールに向かった。各階で律儀に停まっているのか、なかなか上がって来ない。
さっきは動揺のあまり、彼のセキュリティーホルダーの色を見忘れた。短期間のゲストか、常勤者かで渡される色が違う。
それから勿論、馨が今後とるべき対策も。
このビル内で、今まで一度も会った事がないことを考えると…彼女が表示灯を睨む様に見つめ思案してると、
「ねえ、どうして先に帰ったの?」
その言葉と不意に伸びてきた腕が、馨を捉えた。驚いて肩に置かれた手の主を見ると、彼だった。
やはり気付かれてた。
「…」
返答に窮する質問だ。久しぶりに気持ちいいセックスをしたからとは答えにくい。
あの日会って早々、彼に蔵フェスへ誘われた。彼も興味があり行きたかったから、酒蔵に近い待ち合わせ場所を選んだと言った。
早速移動し、昼酒。
そして良い雰囲気になったのを見計らって、馨から本題を切り出した。
『この後、セックスしない?』
躊躇なく彼は首を縦に振り、試飲グラスに入ってた酒を飲み干した。
そして、陽が高いうちに入ったラブホ。
淫らな姿態を見せ、媚を含んだ吐息から本能のままの唸りまで。羞恥をかなぐり捨て、相互に快楽だけを追いかけた。
思いっきり開いた馨の両足。
その中心で彼の指が奏でる、卑猥な音をたよりに、二人は劣情を煽った。
期間が開いてたので、音量が凄い。
上の口の閉まりも緩く、
「…イイ、気持ち、い」
と、涎を滴しながら喘いだ。
蕩けた目つきで彼を見れば、彼の息が荒い。
下を向いてた視線が、馨の瞳とかち合い、口角が上がる。
「ご無沙汰?」
素直に認めるのもシャクで、体勢を買え彼の上に跨がった。
いきなり自分から入れた。
快感にうち震える表情を見下ろすのは、最高のご馳走だった。
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