カフェラテ

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カフェラテ

職場を離れてなんとなく入ったオシャレなカフェ。 こんな時間のカフェだから席はたくさん空いていた。 外が見える窓際のソファに腰を下ろし一息吐く。 「いらっしゃいませ」 キラキラスマイルの店員。窓からのオレンジが彼の顔にかかり、眩しい。 「カフェラテをホットでお願いします」 「はい、かしこまりました。お待ちください」 そのキラキラの笑顔…生粋のゲイである俺には、はっきり言って毒。 恋人はずっときれずにいた。 ちゃんと愛しているのに、毎回別れの言葉は【好きじゃなかったろ?】 そんな事ない、ちゃんと愛してたし大事にしてた。 でも伝わらなければ、意味はない。 だから恋はやめた。もういい、辛いのはこりごりだ。 でもやっぱり、イケメンは好きだよ。 見るだけ…そう、見るだけ。 「お待たせしました。カフェラテです」 イケメンがニッコリと笑いかけるから。 俺も負けじと営業スマイルで返す。 「ありがと」 「……」 口元を片手で隠すイケメン。カフェラテ色の髪が揺れた。 「どうかしました?」 「あぁ…すみません…あなたの笑顔が綺麗で…見惚れてました…」 「ふ…ありがとう。でも俺…男だよ?」 「わかってます…良かったら名前…ってすみません。お客様なのに…」 「ナナシのゴンベエ」 「ナナシ…」 【オーナー!】 カウンターからイケメンが呼ばれる。 オーナーなんだな。 彼は名残惜しそうに俺を見つめ、呼ばれた方に顔を向ける。 「ではナナシさん、ごゆっくり」 その顔は悲しそうだった。
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