カフェラテ

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どんなにイケメンでも、もうイヤだ。 「悲しそうだったな…名前ぐらい教えても良かったかな…」 俺はカフェラテを飲みながら一人呟いた。 街ゆく人を眺めながら、ゆっくりした時間を楽しむ。 気づくと1時間近くここにいる。 「混んできたな…帰ろ」 席を立つとイケメンオーナーがレジに向かう。 気まずいかな、なんて思いながら会計を済ませる。 「ありがとうございました」 「ごちそうさまでした」 「あの…ナナシさん、また来ますか?」 「うん、またね」 俺は軽く手をあげ、店を後にした。 背中に視線を感じながら。 【cafe Thistle】 ふぅん…アザミか。 花言葉は…【触れないで】 俺にピッタリ…自虐気味に笑った。 それから一週間、俺は思い出したようにカフェへと向かった。 ガラス窓から中を覗く。 カウンターの中にオーナーとお客さんかな、綺麗なロングヘアがかかる華奢な背中。 なんだ…イチャつく相手がいるじゃん。 そう思って帰ろうとした瞬間…目があった。 「あ…」 時が止まったように見つめ合う。 彼がふわりと微笑む。 俺はそこにいられずに、走った。 恋から逃げた。 「ダメだ…ダメなんだ。俺…は…」 息を切らして一人暮らしのマンションまで帰った。 鍵を開け、ベッドに倒れ込む。 ふふ…こんなに走ったのって学生以来だ。 バカだな…何やってんだ。
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