溜め息

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溜め息

はぁ… もう何度目の溜め息、なんの溜め息だろう… もう2週間、あのカフェからは遠のいてる。 恋しいのはオーナーじゃない、あのコーヒーだ。 あの日からlimeは毎日来る。俺は返事をしたりしなかったり。 オーナーは問いかけも店への誘いもしない。 彼なりの気遣いなんだろうな、なんたってNO1の男だから。 店に誘われたら、面倒なのを装って速攻で行くのに。 はぁ… 誘われるのを待ってる自分にまた溜め息が出る。 【仕事帰りコーヒー飲みに寄る】 limeを送ってみる、やっぱりすぐ既読になる。 【お待ちしております】 素気ない返事なのに、勝手に顔がニヤつく。 何やってんだろ、行かなきゃいいのに。 会わなければすぐ忘れるだろ。 「名梨さん、いらっしゃい。お待ちしてました、カウンターへどうぞ。ブラックでいいですか?」 「うん」 丁寧にコーヒーを淹れるオーナーに見惚れる。 「そんなに見つめられると緊張します。俺の駆け引きは成功しましたか?」 「何が?」 「恋愛ごとに疲れているあなたを落とすため、ちょっとだけ」 「?」 「連絡は断つことなく、問いかけも誘いの文句も言わない。そしたらあなたはモヤモヤするはず。そしてここに来たくなる」 「は…俺は…その駆け引きにまんまと引っ掛かったって事か…さすがだな。でもそんな駆け引きは女性にしてやれよ」 「あなたがいい。コーヒーどうぞ…」 「俺はダメだって言ったろ?オーナーと客でいい」 「そしたら…俺は…あなたに…触れられない…」
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