エーミール〜こいにおちて〜

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 「ハインリヒ。さ、さっき全てを譲ると言っていたよね。僕の蝶を潰してしまった、そのお詫びに。もう一度言うが、君のおもちゃやコレクションなどいらない。め、命令だよ。僕を抱きたまえ…。だ、抱きしめると言う意味ではないと知っているのだろうね?」  ハインリヒが、僕の身体を優しくベッドに押し倒してくれた。そのまま、僕のシャツのボタンを一段ずつ外していく。女性のように生白いので、あまり人に晒したくない僕の肌が露わになった。  「う…嘘だよ。命令なんてのも。本当は、君とこうしたくて仕方がなかった。何度も夢に見た。最後のお願いだ。僕の事を、好きにして。壊れてしまうくらいに、抱きしめて。どうか、僕の事を愛してください…」  そこまでで、僕の発言は遮られた。後は唇を塞がれて、ベッドの上で彼にいいように弄ばれて…。    ああ、でも。何という事だろう。生まれてこの方すべてにおいて完璧でいた僕が、この大事な時に及んでこんな重大なミスを犯すとは…!
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