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謝罪の言葉とともに、見せられたクジャクヤママユは…。彼の手の中で、粉々に潰れていた。
そういや、メイドの一人が慌てて逃げる彼を見たと言っていたっけ。恐らくは、その時に乱暴にポケットに入れたかして潰してしまったのだろう。ああもう、ドジっ子さんかよ!知ってたけどさぁ!
彼は沈痛な面持ちで、謝罪と弁償を提案した。彼のおもちゃや標本を、全て僕に譲ると言ってくれた。それは正直、心の底からどうでも良かったかな。
また、今の立場を利用して彼に関係を要求する事も考えたけれど…。正直に告白する彼の前で、これ以上自分を落としたくはない。それよりも、今こそ思いの丈を告げる時。言うんだ、エーミール。
そうかそうか。そんな事は、どうでもいいよ。蝶は蝶。人は人だ。僕たちは、生きて今ここにいるのだから。それ以上に大切な事が、他にあるかい?
聞いたよ、ハインリヒ。ご家族とスイスに引っ越すのだって?とても残念だ。だけれど、応援しているよ。身体を壊さずに、どうかいつまでも元気で。
そ、それでね。僕の方こそ、いつかの非礼を詫びさせて欲しいんだ…。
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