第二話。模倣者〜動機あるものたち〜①

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第二話。模倣者〜動機あるものたち〜①

 私がその店に着いたのは夜の8時過ぎ。ちょうど頃合いに腹も空いていた。最寄駅から10、15分くらいか。実際歩いた時間は30分以上だと思われるその場所は、古い雑居ビルの一階。Aの言葉で探し出すには割と苦労させられた。  一見疲労のせいか、脳内イメージ補正の賜物か、雑居ビル全体がやや傾いて見えるほど、古めかしい昭和の佇まいがそこにあった。  入口は自動ドアではない、横に開くとガラガラと音のするソレ。もはやレトロを通り越して古典だろうと思いつつ、店内に入るとこれまた、古風そのままの世界観。  一瞬、私は異世界転生でもしたのかと錯覚した。  店内は奥に向かって長く伸びており、入口から見て右側には、成年男子の股下20cm程度のやや高い位置にある畳の座敷席。  備え付けのテーブルは広く、鉄板焼き用の設備がついているタイプ。ひと座席に六人はギリギリ座れるだろうか、今時珍しいかもしれない、簡易的な障子ばりの間仕切りがあるだけの座敷席が三席分。  中央部分は比較的にに広くスペースが取られており、四人用のテーブルくらいは置けそうに思えた。突き当たりにはお手洗いと書かれたドア。
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