第二話。模倣者〜動機あるものたち〜①

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 左側が奥に向かって伸びるL字型のカウンター席。その内側厨房で三人の男が忙しく動いていた。カウンター席のすぐ前に二人、奥に一人。鉄板が忙しなく、かしゃかしゃと金属音を響かせていた。  厨房入り口付近、縦長カウンター席の横側に、元々テーブル席として使っていたのかしれない、比較的大型のテーブルがあり、その上にはおでんの入った器具と取り皿などなどが置かれていた。  店内の壁は元々、白壁であったであろう事が見て取れるが、所々剥がれ、地のコンクリートが見えており他はタバコの脂と煙で黄ばんでいる。そこに貼られている赤で縁取りされたお品書きも同様に。  その内装は、昭和生まれには郷愁を、平成世代には【汚くて美味い店】のテンプレ、未来に生きる令和の申し子たちは、社会の教科書で見るかもしれない風景。  これを異世界と呼ばず、なんと呼ぶべきか。  こう言った居酒屋風情ある鉄板焼き店舗としては、なかなかに規模が大きい。雑居ビル一階面積の多くがこの店が占めていると思われ、毎月の賃料を考えるに、かなりの金額だと想像に難くない。ひょっとしたらビルのオーナーが営んでいるのかもしれない。  
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