シーと蒼き衣

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 ミーへ  大都会に浮かぶ森のような定禅寺通(じょうぜんじどお)りの欅並木(けやきなみき)は、深碧色(しんぺきいろ)の豊潤な葉叢(はむら)で溢れていた。仕事を終えたオレは、いつものようにビルの合間の欅並木を見上げ、地下鉄の勾当台公園駅(こうとうだいこうえんえき)に向かって歩きだした。夜の(とばり)をむかえた街は、ビル群の照明や車のヘッドライトが乱反射し、あらたな喧騒がはじまっていた。  国分町通(こくぶんちょうどお)りとの小さな交差点を渡ると、道端(みちばた)に街灯の仄かな明かりに照らされて、ほんとに小さな白い仔猫が1匹鳴いていた。  驚いた。  なぜ人や車の往来がさかんな道路に、ぽつんと小さな仔猫がいるのだろう。道端の白線のすぐ内側あたりで小さな声で鳴いている。  ──ミィミィミィ。  このままでは車に()かれてしまう、とにかくオレは白い仔猫を抱き上げようと思った。  オレを見上げて鳴いている小さな白い仔猫。その純真なひとみに吸い込まれそうになった。  そっと手を差し伸べた。  すると仔猫は、突然、オレの指に噛みついた。  ──イタッ!  激しい痛み。薬指が血で(にじ)んでいる。とても小さな口だけど、歯はしっかり生えていた。  この子は、小さくても野生の生き物なんだ。  しかもとても怯えている。 fb7857d7-7f69-46ef-aec4-7d2a38836458
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