1.プリンセス戦士百合香 爆誕!

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お城の中はさぞ豪華な内装なのだろうかと期待していたけれど、意外と世俗的だった。 ビジネスホテルのようやこざっぱりとした作りで、受付の代わりに各部屋の様子がわかる写真がパネルに映し出されたスペースがある。   普通ならとの部屋にするか楽しく選ぶのだが、自分はここに来て完全にビビっていた。 いくらイケメンでもついさっき会ったばかりの人と関係を持つなんて無理でしょ? この人の前で服を脱ぐなんて無理だし、変な病気を移されるかもしれないし、この時こんなリアクションしてたとか言いふらされるかもしれないし、盗撮されてネットにあげられるかもしれない。 ここまで来るとマイナスのことしか考えられない。 やっぱり絶対に無理、どこからどう考えても無理。 「この部屋プールがあって、こっちの部屋は温泉があるよ」 市太郎さんは呑気に部屋の写真を見て喜んでいる。 今引き返さないと大変なことになる。 覚悟を決め、市太郎さんに頭を下げた。 「ごめんさい、ここまでついて来てあれなんですが、やっぱり無理です」 酷くなじられる、そう思ったけれど市太郎は何故だか笑った。 「ひょっとしてセックスしたことないんだろ?」 市太郎さんはアメリカ帰りらしく、性に対して開かれている。生まれも育ちも日本で、性に閉ざされている環境に身を置く私は、何にも答えられなかった。 市太郎さんは相変わらずニコニコしている。 「百合香は彼氏いないの?何で?」 市太郎さんが無邪気に心の傷をえぐった。 「そんなのモテないからに決まってんだろ?」 そう叫ぼうとするのをグッと堪えた。 「彼氏は女カーストの上位50%が持てる贅沢品」 そう呟くと市太郎さんはまた笑った。 「日本の女カーストって何で順位付けされてるの?」 「顔、胸、身長、体重、コミュ力、ファッションセンス、頭脳、優しさ」 「じゃあ百合香は上から数えて何%くらいの集団にいるの?」 「80%」 「妥当なラインだね。日本じゃ背の高い女は求められていない」 市太郎はゲラゲラと笑った。本当は58パーセントぐらいだと思っていたけれど、謙遜してそう言った自分はひどく傷ついた。 「今日ホテルに誘ったのはさ、別にセックスしたかったわけではない」 「はい?」 市太郎さんが言っていることが上手く整理できない。だってホテル行こうって誘って来たのは市太郎さんなのに。 「女だったら、カースト最上位ぐらいの女が望む時に派遣される」 「女を派遣?!」 とんでもない男尊女卑な単語を叫び返すと、市太郎さんはニッコリと笑った。おそらくだけれど、今のヤバすぎる発言は突っ込まれたくない発言のようだ。 「大金貰えて俺とセックスできるから、みんな喜んで来てるよ。あっそういえば、百合香、これ見てよ」 何かを誤魔化すように市太郎さんはポケットから茶色い小瓶を取り出した。一見すると、コンビニのレジ横に置いてある栄養ドリンクの瓶のようだ。
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