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ショッピングモール手前にある、大きな公園が見えてくると高志のテンションが上がった。私も昔そうだった、公園の遊具は見るだけで子供を笑顔にできる。
「やった!まだ誰もいない。この公園は俺のもんだ」
微笑ましくその様子を眺めていると、何故だか市太郎も興奮していた。
「うわっ、すっげー長い滑り台じゃん!」
そして高志と一緒に駆け出し、勢いよく滑った。
たった一つの滑り台でここまで喜べるなんて、一体どんな生活をしていたのだろうか。
あんなわけのわからない魔法みたいな薬を手に入れられる環境ってどんな世界なのだろう。
市太郎は高志と一緒に子供のように無邪気にブランコを漕いでいる。市太郎のブランコは空まで届きそうなほど高く上がった。
三十分ほど遊んでいると、他の家族連れがやってくる声がする。さっきまであんなに無邪気に遊んでいた市太郎は急に遊ぶのを止め、私の隣に帰ってきた。
「あんなに楽しそうだったのに遊ぶの止めたの?」
「二十歳の男が無邪気に遊んでたら怖いだろ?事案だ」
確かに、ここ日本ではそういう見方をされるだろう。
「常識とか知らなさそうなのに、実はよくわかってるんだね」
「日本の公園で無邪気に遊んでいいのは中学生までだという常識は前に習ったことがある」
「習う?誰がそんなこと教えてくれるの?」
「俺がいたところでは、普通の勉強の他に自分の国の一般常識も覚えさせられる」
頭の中に?がつく。学校とは勉強だけを教えて、一般常識を教えてくれる所もあるのだろうか。
そんな私の疑問を察してか、市太郎は悲しそうな顔で私を見つめた。
「俺も百合香と普通の小学校通って、友達と元気に遊びたかったよ」
彼の悲しそうな表情は抱えている悲しみを消し去ってあげたい。そう周りの人に思わせる不思議さがある。
「小学校って楽しいよね。低学年の頃は本当に楽しかったよ、みんなより体格もいいから、悪いことしてる男子懲らしめてさ、勉強も簡単だったし、沢山発言してさ。リーダーだったの」
「何でそんなにあった自信が無くなったの?」
市太郎に痛いところを突かれた。今現在の自分からは想像もつかなかったのだろう。4月生まれだったからか小学生の頃は無敵だった。
こんなに自分に自信が無くなったのは、別にこれといった理由もない、段々自分が勉強もできない、運動も思うほどできない存在だということがわかってきたのだ。
するとちょうど高志が帰ってきた。
「おなかすいた、スーパーで何か買って食べようよ」
市太郎は常識がなさそうである、だからすぐにこの話を止めて笑顔を作った。
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