2.悪をやっつけろ!

8/11
前へ
/69ページ
次へ
そしてこの話は高志が戻ってきたことにより中断されてしまう。市太郎は察しが良く色んなことを理解している。 三人でマンションへの帰り道を歩く。ここら辺は住宅街が続いていて、所々コンビニや郵便局などの生活必需店が点在していた。 車もガードレールの中を穏やかに走り抜けていく。高志は私と市太郎に手を繋がれニコニコと歩いていた。 「あのお菓子いつ届くかな?」 高志が市太郎を見上げた瞬間、どこからか女性の悲鳴が聞こえた。 「助けて!泥棒!」 振り向くと、通り過ぎた郵便局の前で座り込むおばあちゃんが目視でき、原チャで二人乗りした若い男達がこちらに向かって走行している。 市太郎がニヤリと笑った。 おそらく私にプリンセス戦士に変身しろと促しているのだ。 いや、それはできない。他人のために自分が苦労を背負い込めるほど、私はお人好しではない。 「だから、無理だって」 小声でそう呟き、市太郎から視線を逸らし、座り込んでいるおばあちゃんを見た。 市太郎が悲しそうにしているのが空気で私にまで伝わって来る。 けれど、どれだけ頼まれようが無理なものは無理なのだ。
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加