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そしてこの話は高志が戻ってきたことにより中断されてしまう。市太郎は察しが良く色んなことを理解している。
三人でマンションへの帰り道を歩く。ここら辺は住宅街が続いていて、所々コンビニや郵便局などの生活必需店が点在していた。
車もガードレールの中を穏やかに走り抜けていく。高志は私と市太郎に手を繋がれニコニコと歩いていた。
「あのお菓子いつ届くかな?」
高志が市太郎を見上げた瞬間、どこからか女性の悲鳴が聞こえた。
「助けて!泥棒!」
振り向くと、通り過ぎた郵便局の前で座り込むおばあちゃんが目視でき、原チャで二人乗りした若い男達がこちらに向かって走行している。
市太郎がニヤリと笑った。
おそらく私にプリンセス戦士に変身しろと促しているのだ。
いや、それはできない。他人のために自分が苦労を背負い込めるほど、私はお人好しではない。
「だから、無理だって」
小声でそう呟き、市太郎から視線を逸らし、座り込んでいるおばあちゃんを見た。
市太郎が悲しそうにしているのが空気で私にまで伝わって来る。
けれど、どれだけ頼まれようが無理なものは無理なのだ。
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