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特に戦隊ヒーローが大好きな高志は、目を輝かせ、無邪気に私に抱きついた。
「お姉ちゃんやっぱりプリンセス戦士だったの?!かっこいい!」
「やっぱりってどういうことだ?」と思いながらも、さっきまでガクガク震えていた高志を抱きしめた。本当に無事で良かった。
何だかんだ言っても家族は大切だ。
市太郎はギャラリーに紛れ、ずっと私にスマホを向けている。おそらく動画を撮っているのだろう。
そして急に動画を撮るの止め、目が合ってしまう。
「百合香、最高にかっこいいよ」
いつものようにニッコリと微笑まれた。
やっぱりイケメンは正義だった。
思わずときめいてしまった自分を慌てて戒める。
市ギャラリーの方々もスマホを取り出し私を撮り始めた。早く退散しなければならない。ネットにこの写真が出回ったら面倒な事になる。
ここ日本では出る杭は打たれるのだ。
三人で帰路につく。
一時を指す街頭の時計を見上げていると、自転車に乗った派手目な女子高生二人が私たちの横を追い越して行った。
「だから、ドレス着た女の人が高く飛んで飛び蹴りしてひったくりやっつけたんだって」
「何それ、ヤバっ。激ヤバじゃん」
おそらく、これは私のことだ。
人に「すごい」と言われたことのなかったから
、思わず顔がニヤけてしまった。市太郎は全てを見透かしたようにまたニッコリと笑った。
「百合香、くせになってるんでしょ?」
「……なってないと言ったら嘘になるかも。今まで人に褒められたり、羨望されること、なかったし」
「まぁ、そのスペックじゃ仕方ないよ」
後頭部をバットで殴られたような衝撃的。せめて「そんなことないよ」とお世辞を言って欲しかった。
市太郎の言うように私は誰よりも自己肯定感が低く誰よりも承認欲求が強い。
だからこそ、プリンセス戦士に変身できるのもまた一興だ。
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