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怖い、怖すぎる。
怪しい宗教の勧誘だ、寧ろ犯罪がらみかもしれない。
ウチは表札を出していないし、名前のわかるものは玄関に一つもない。
なのにこの外国人は私の名前をしっている。叫び出したいぐらいの恐怖、けれども、必死に声を抑えた。
私が在宅していることを悟られてはいけない。
お父さんもお母さんも高志でさえも私と同じ気持ちなようで、誰も物音ひとつ立てない。
ところが、市太郎はいつものニコニコでインターホンに呼びかけた。
「ピエール!!よくここまで来たな」
一気に家の空気が緩む、お母さんもお父さんも「市太郎君の知り合いだったの?」と胸を撫で下ろした。
けれども、私の警戒心はまだ解けていない。
怪しい、怪しすぎる。
市太郎が玄関に向かって走った後ろをついていった。謎の外国人ピエールの素性もそうだし、秘密主義の市太郎のことがわかるかもしれないからだ。
市太郎がドアを開けると、彼らは外国の挨拶のように自然とハグで再会を喜び抱き合っている。
ピエールは市太郎の背後で佇んでいる私を見つけると、また馬鹿でかい声で叫んだ。
「キミガユリカ?アレダケお金カカッテルのに、コノフツウノオンナプリンセス戦士ニシタンダナ」
腹が立つ、なぜこんな見ず知らずの人間にここまで馬鹿にされなければならないのか。
「誰?この失礼な外国人は?」
市太郎はニッコリと笑った。
「俺の長年の友人でもあり、監視役でもある」
「監視?!」
市太郎はまずいことを言ったなとばかりに、表情が曇ったがすぐにまた誤魔化しにかかった。
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