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「はぁ、はぁ、ご、ごめんねっ。君たち大丈夫だったか?」
飼い主のおじさんは突っかけ姿で、急いで出てきたのか、はち切れそうなお腹からシャツが飛び出ていた。走ってきた反動でぜぇぜぇと息をしていて、何だかそういう動物みたいだった。
押さえつけられている犬は観念したのか、それともリードに繋がれて今度は散歩をしてもらえると思ったのか、とにかく飼い主を引っ張って向こうへ駆けだしていこうとしている。
「おいっ、こらっ。ま、まてっって。おいっ。待ってくれって。君たちっけ、怪我はないっかっ。」
力の強い犬に引っ張られるように声を掛けながら、どうしても制御できず、犬と飼い主はそのまま向こうへ走っていってしまった。
残された抱き合ったままの2人は、その様子にあっけにとられた顔をしていたが、お互いの顔を見合わせてプッと笑いを零した。
「ぷっ、ぷぷっ、あっはっはっ、何だあれっ」
「ふふっ、ふふっ、なっ、なにっ、ははっはっ。」
恐怖が過ぎ去ってハイな気分になったのか、2人は暫く笑い合っていたが、その内ベージュの子は瞳に涙を浮かべて泣き出してしまった。
「ふっっ・・うぅぅ・・・うぇぇんっ。」
「えっ、ちょっ。泣かないでっ。ねっ、もう大丈夫だからっ。泣いちゃダメだよ。」
グリーンのチェックシャツを着た子は必死に言葉をかけてベージュのトレーナーの子を泣き止ませようとしていた。
2人とも幼児特有のぽっちゃりとしたほっぺに、むっちりとした腕。瞳は大きく可愛らしい鼻と苺のようなピンクの唇をしていた。
ややベージュのトレーナーの子の方が垂れ目で優し気な雰囲気を醸し出していたが、愛らしいのは変わりなく、心配そうに顔を覗きこむチェックシャツの子がポケットから取り出したハンカチで涙を拭ってあげてる姿は悶える程に可愛らしい一対の絵のようだ。
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