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家に帰ってきても僕の苦行は止まらなかった。
学校から帰ってくると、台所で料理をしながら母が
「ねぇ あんた映画で賞取ったみたいじゃない」
とこちらを見ずに言ってきた。
「あぁ、取ったよ」
僕が言うと母は
「ハー」
と大きなため息をついてから話し出した。
「まさか、あんた自分に才能があって、映画監督に向いてるなんて思ってないでしょうね」
「えっ…?」
少しは褒めてくれると思っていたので、僕は戸惑った
「高校や大学まで青春の思い出でいいけど、映画で食べていくなんていわないでよ。絶対に無理なんだから」
「わかってるよ!! 最初からなろうなんて思ってないよ!!」
今まで積もったモノが母の言葉で爆発して、強めの語気で言うと僕は家を勢いよく飛び出した。
そしてただ日が沈み暗くなった住宅街を走っていた。
「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ」
僕は訳も分からず走りまくって、家から随分と離れたコンビの駐車場で息を整えている。
そして水分が欲しくてコンビニに入った。
僕はアクエリアスを手に取りレジに向かった。
「あれ? 樋口くん?」
まさかだった。レジの店員は同じクラスの女子だった。
しかも、派手な見た目の女子でピアスに指輪とアクセサリーをジャラジャラとつけて、茶髪のボブにインナーカラーの赤と目の引く出で立ちだ。
クラスで地味で孤立している僕と、一目置かれて孤立してる彼女じゃ、同じ孤立でも格が違う。
「アッ、アッ、アッ」
こんな派手の女子と話したことなんてい無いので戸惑いで言葉が出ない。
「もうそろそろ。おわんだよね。途中まで一緒に帰らない」
「アッ!? エッ!? エッ!?」
僕は戸惑いながらも、断れない性格なので自然と頷いてしまった。
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