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そしてそんな二人のことを、周囲のみんなは好きだった。もちろん彼女も、二人のことが大好きだった。いつか自分も誰かと、あの二人のような家庭を築きたい。そう願った。二人は彼女の強い憧れの対象であった。
いや、正直に言えば、とてつもなく激しい羨望の的であった。見透かされるのが怖くて、激しい羨望を、過度なほどの親切心にすり替えて、彼女は二人に接してきたのである。彼の職場の良き同僚という立場が、彼女の悲しい避難場所であった。
彼女は二人のことが大好きだった。たまらなく大好きだった。だからこそ、しばしば二人を少しだけ憎んだ。だが彼女は自分自身ではそれを決して認めようとはしなかった。
もしそれを素直に認めてしまうと、彼女の憎しみはやがて制御できないほど大きく成長し、最後にはそれが誰に向かっていくか、自分でもよくわかっていたからである。
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