1. 紅玉と白薔薇

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1. 紅玉と白薔薇

夕焼けの空を見ると妻を思う。 降りつもる雪を見ると妻を思う。 彼はそんな夫であった。 なぜなら、燃えるような夕焼けは、妻のやわらかな唇と同じ紅玉(ルビィ)であり、降りつもる雪は、妻のきよらかな背中と同じ白薔薇(アバランチェ)だから。 そして信じていた。 心まで焦がす夕焼けは妻の姉であり、中庭に眠る雪は妻の妹である。 彼は夕焼けを愛していた。 雪を愛していた。 そしてそれ以上に、彼女たちの「姉妹」を愛していた。 彼は12月が好きだった。 12月は彼の愛するものたちの母だから。 妻は12月に生まれた。 雪も妻も12月の娘であった
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