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駅で切符を買う。
母親と長女はICカードがあるので買うのは父親だけだ。
小銭を渡して「買ってきて」と言うと
「全員の分だとお金が足りないよ?」
こういう計算は出来るから不思議だ。
父親の分だけ買ってきてという意図は伝わっていないのに。
切符を買い改札を通る。電車に乗るとキョロキョロと見渡し、空いている席にストンと腰を下ろす。その様子は特に不自然な動きには思えない。
人々の様子や街の風景は父親にはどんな風に見えているのだろうか。
以前はよく、あの人は太り過ぎだとか、あの服装は寒そうだとかいちいち口にして「恥ずかしいからやめて!」と母親に怒られていたものだけど。
目的の店の前で長女旦那が待っていた。
「こんばんわ」と言った長女旦那を誰だろう?という顔で見ている。
「長女の旦那さんよ」と母親が言うのを聞いてやっと
「頭が随分白いから誰かと思ったよ」
と声をかけたが本当は誰だか分からないのではないかと感じた。
何を飲むかと聞けば答えるし、コレは何?といった会話はするが、以前のように長女旦那を捕まえて自論を展開することは無く、黙々と箸を動かす。
これに長女旦那は本当にビックリしたようだ。
「長女父親さん、大丈夫なのか?」
あまりよろしくないわね。
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