長女と母親

2/2
前へ
/38ページ
次へ
まぁ当の本人、長女からしたら何をそんなに怒られたのか…。 妹や友達に意地悪をしたとか、どこかで何かを壊したとか、そういうことだったのだろうけれど、怒られたという記憶だけで具体的なことは何も覚えていない。申し訳ないほどに。 ほぼ放ったらかしで近所を駆け回りママゴトから野球まで好き放題遊んではどこかで何かの事件を起こしていたのだろうなぁと振り返る。 真面目な母親はあちこちに頭を下げて回っていたのかもしれない。 心配性なのかおおらかなのか肝が据わってるのかよく分からない母親であったが、その夫の仕事や人間関係には随分と振り回され苦労していたと思う。 「言っても聞かないからね」 夫に期待することは諦めたのだろうか。 母親は家計が火の車であろうが、厄介ごとが起ころうが、子供たちにそれを悟られるような言動は決してしなかった。愚痴もこぼさなかった気がする。 長女とは哀しいもので、ウチにはお金が無さそうだということや父親の仕事の異変など察していたけれど。それを教えてもらえないことで何か常に不安を感じていたのだけれど。 それも親心なんだろうね。 飄々としながらも必死で家族を守ってきた母親を、今度は守ってあげなければ本当に親不孝というものだ。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加