7人が本棚に入れています
本棚に追加
休日、私は川野君の誕生日プレゼントを探しに、ショッピングモールへ行った。クラスメイトの異性に誕生日プレゼントを買うのは初めての経験だ。
他人の気持ちを考えながら、買い物をするのは不思議な感じだったが、嫌な気分ではなかった。
私は川野君のために自分の時間を使っている。そして、川野君は私のために時間を使っているのだ。
川野君もきっと色々と悩んでいるだろう。
自分の事を思ってくれている人がいる。そのことが素直に嬉しかった。
「しにな」その言葉に心が支配されて、誕生日が嫌いだった。あの時のことを忘れることはできない。でも、好きでもない人から言われた一言に縛られているなんておかしい。あの言葉に支配される人生をそろそろ卒業すべきだ。誕生日は喜んでいい日なのだ。
私はもっと自分の人生を大切にするべきだ。
そんな当たり前のことに私は気付いた。
ショッピングモールの中で、私の心は軽くなっていた。
4月27日になった。悩みに悩んだ結果、私は川野君に青いチェックのハンカチを買った。川野君はベンチに座って待っていた。
「さっそくだけど、おれからプレゼント渡すね」
渡されたプレゼントを見て、私は思わず笑ってしまった。それは私が選んだハンカチと同じデザインの色違いだった。色は黄緑で春の季節にぴったりだ。
私がプレゼントを渡すと、川野君も笑った。その笑顔に今まで感じたことのない気持ちが芽生えた。
「じゃあ、どうする?同時に言おうか?」
「それは、タイミングが難しそうだから交互に言おうよ」
私の言葉に川野君は「そうだな」と言った。
「じゃあ、おれから」
川野君が私の目を真っすぐ見る。
「野原さん、おめでとう」
私は心から思う。
川野君と同じ、誕生日で良かった。
私は少し息を吸い「おめでとう」と言った。
解き放たれた心に春の空気が入った。
最初のコメントを投稿しよう!