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おめでとう
私の誕生日は4月27日だ。
小学生の時、それをクラスメイトに話したらこう言われた。
「野原さんの誕生日、しにな、の日だね」
それ以来、誕生日がくるたびにその言葉を思い出す。
隣の席に座っている川野君の誕生日を知ったのは、高校の入学式の日だった。川野君は明るくて社交的な性格らしく、積極的に周りの男子に声をかけていた。
話題は誕生日となり川野君は「おれの誕生日、今月なんだ」と言った。
「へえ、何日だよ」
「27日」
その言葉に私は、また、あの嫌な記憶を思い出した。それと同時に思う。川野君は私と同じ思いをしたことがないだろうか。
それから1週間たった時、英語の授業で英語の自己紹介カードを作ることになった。
「じゃあ、名前と誕生日、趣味とか特技を書いてもらおうかな」と教師が言った。
誕生日、また、私の心は重くなる。
嘘を書くわけにはいかないので、誕生日欄に、April27thと書いた。
「では、代表して何人かに言ってもらいます」
教師が私の名前を言わないことを願った。しかし、その日の私は運が悪かった。
「野原さん、お願いします」
私は立ち上がり、自己紹介カードを読んだ。その間、「しにな」という言葉が頭から離れない。
読むのが終わった後、川野君がこちらを見ている感じがしたが、そんなことはもう、どうでも良かった。
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