雪女伝説

1/1
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ

雪女伝説

今日も2人でナンパする予定で中村を迎えに行ったら、体調不良って事でドタキャンされたんだ。もっと早く言えよって話。2時間掛けて迎えに来たから、そのまま帰る訳にもいかず、初めて1人でのナンパになった。夕方までには体調を戻すから、ナンパに成功したら呼んでくれだって。良いとこどりかよ! って思ったけど、まあ、中村には色々借りもあるし、お詫びとして、名産の蟹の缶詰めを4つもくれたから別に良いんだけどね。あっ、しまった。ポケットに缶詰めを入れたままだった。道理で動き難い訳だ。 滑るのに邪魔になってしまうので、缶詰めをコンビニの袋に入れ、コースから100m近く離れた場所の木の枝に引っかけ、リフト乗り場へ戻る。あの場所なら、半日ぐらいであれば誰にも見つからないだろう。 今日は1人だという事もあり、少し気分を変えて、いつもの初心者向けコースとは違う場所でナンパをしている。中村と2人であれば、初心者を狙うのが基本だった。教えてあげるという口実があるからだ。ただ、今日は1人。一時的にでも、1人で滑っている女性をターゲットにしようと考えていた。 「お姉さん一緒に滑りませんか?」 俺は、ある1人の女性に後ろから声を掛けた。彼女は振り返り、笑いながら言う。 「えっ? ナンパですか?」 「それです。取り敢えず、一緒に上までどうですか?」 ここは2人乗りのリフトがある場所だ。ナンパ場所としては最適だろう。 「ごめんなさい。ちょっと、友達を待っていて……」 「そうですか……残念です。では、またの機会に」 振られ慣れているので、特に気にもせず、次の女性を探そうと思っていたところ、今の女性が話し掛けてきた。 「でも、お兄さん度胸ありますね」 「そうですか? ナンパなんて慣れですよ」 「いえ、そういう意味じゃなく……」 「ん?」 「最近、雪女が出るって噂なんですよ」 「雪女? そうなんだ。じゃあ、雪女をナンパしてきます」 「ははは。頑張って~」 俺は笑顔で彼女に手を振って別れると、彼女も笑顔で手を振り返してくれた。 雪女だって? マジかよ……。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!