一 キケンな出会い

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一 キケンな出会い

その男と出会ったのは、結婚を意識して長いこと付き合っていた彼氏に、浮気された挙句にあっさりと振られて、せめてもの気分転換にと初めて訪れてみた、とある婚活パーティーでの席だった──。 女性は三万円、男性は五万円の会費を払うという割りと高めな設定だったこともあって、きっと出席者もそれなりに信頼できる人達だろうと、私は思っていた。 けれどそこに、彼……(かい)(どう) (みな)()は、何気ない風を装い紛れ込んでいたのだ。 薄茶色の髪に涼しげな目をしたクールな容姿に、スリムなスーツをスタイリッシュに着こなしたそのルックスは、パーティーに参加した女性陣の目を一身に集めていて、誰があの彼を射止めるんだろうと半ば戦々恐々とした雰囲気さえ漂っていた。 だから、彼が私を選ぶなんてことはあり得ないはずと、なんとなく書いてみたその名前が、自分の名前と一緒に呼ばれて、カップル成立が告げられた時には、私自身が驚きを隠せなかった。 周りの女性たちから羨望の眼差しで見つめられる中、「よろしくね」と、彼から手が差し出されて、おずおずと握り返すと、 「……君が、一番可愛かったよ。()(しな) 紗耶(さや)ちゃん」 すかさず握った手がぐいと引き寄せられ、そう耳元に囁かれた。 突然に距離が縮められて、戸惑いを隠せないでいると、 「……そんなに緊張しちゃって、可愛いね。やっぱり、俺の見る目は間違ってなかったよね?」 と、再び耳に声を吹き込むようにも話して、唇の端でフッと軽く微笑って見せた。
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