逢魔が時

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夕方の空は橙色だ。 一本の道路があり、その近くにバスの停留所がある。停留所はガラス張りだ。 停留所のベンチに二人の女子中学生が座っている。 一人は長い黒髪を後ろで一本に束ねた少女。その隣に座っているのが先輩でストレートパーマの少女だ。 二人は浴衣を着ている。夏祭りの帰りだ。焼きそばを食べたり、変なお面を買ったり、金魚すくいをしたり、目いっぱい楽しんだ。 二人の間には、祭りで買ったものや手に入れた景品が入っている袋が置いてある。 長い黒髪を後ろで一本に束ねた少女──雪乃ゆかりが言った。 「センパイ。『逢魔が時』って言葉を知ってますか? 『逢魔が時』っていうのは、だいたい午後六時前後のことを言うんです。その時間帯になると妖怪や妖魔に出会ったり──まあ、とにかく嫌なことに遭遇するんです」 ゆかりは、怖がらせるために怖い話をした。 ストレートパーマの少女──中原礼奈は言った。 「ゆかり、あなたの足下に──」 「センパイ、そんな手には引っかかりませんよ! ──センパイ?」 礼奈が真っ青な顔をして、ゆかりの後ろのガラスを見ていた。 ゆかりが振り向くと、白い女の顔がガラスに映っていた。立ち上がって数歩後ろへ下がり、卒倒した。 礼奈は、ゆかりの肩を掴んで揺さぶる。返事がない。 「お祭りで買ったお面を使って、ちょっとからかっただけなんだけど……。やり過ぎたみたいね」
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