嘘つきの砂時計

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「では、これから『夢をかなえる起業セミナー』をはじめます!」  ホテルの会議室。  ホワイトボードの前で。    あたしは、もったいぶってしゃべり始めた。ネットからひっぱってきた、それっぽい情報を。  必死にメモをとっている参加者を見ていると、笑い出しそうになってしまう。借金してまでこのセミナーに参加した人もいるんだって。なんて馬鹿な人たち。    見下しながらも、それをおくびにも出さずに接するって、すっごい快感。 「先生、質問があるんですけど……」 「先生、次回のセミナーはいつですか?」  ただのフリーターだったあたしが、「先生」だって。みんながあたしを敬い、あたしみたいになりたいと欲してる。  こうやってセミナーを何回かやるだけで、大金が手に入る。なんておいしい商売。やみつきになりそう。  いいのかな、こんなの。  罪悪感がちくんと胸を刺す。    だけど、頭をふってそいつを追い払った。
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