嘘つきの砂時計

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「そ、それは……」  嘘はついてない。ただ、本当のことをすべて伝えていなかっただけ。おばあちゃんには、あたしの浅はかな魂胆なんてお見通しだった。  さらさらさら。  黒い砂が降りつもる。  あたしの体を飲み込んでいく。    口に、鼻に、砂が入ってくる。  必死に手を伸ばしても、砂の外に出られない。 「出して、助けて、このままじゃ……!」 ――いいかい、嘘っていうのはね……。  砂に飲み込まれる刹那、おばあちゃんの言葉が降ってきた。 ――「人を(だま)そうとする気持ち」そのものなんだよ。
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